紫陽花と週末と

雨が降ったら雑誌を繰って、ちょっとストラトなんかをつま弾いて。

入梅前に思い描いていた雨の週末は、すっかりアタマの中から消えてなくなっている。週末の天気・・・それどころか、数日前から日和が気になってしかたがない。今日は水曜、そんな週の中日だ。シロとネロを連れ出そうと玄関を開けた瞬間、雨の匂いがやわらかく入り込んできた朝。降り始めた雨は、仕事場に向かう時間になっても降りやまず、雨脚は強くなるばかり。昨日も内陸は、夕方から夜にかけて雨に濡れたというから、都心で「空梅雨だ」なんて喜んでいたら大間違いだ。

左腕にはめたハミルトンが濡れてしまわないように、手首にジャケットを巻きつけ、急いで軽トラの運転席に潜り込む。フロントガラスに雨が流れ、向かいの家の屋根がぐにゃりとねじれて歪んで見える。オーディオにUSBメモリを挿し込みイグニッションを前に倒すと、ノーメイク時代のKISSらしいリフに、ポールが「Into to the fire!」と叫んだ。路地を挟んだ紫陽花が、気持ちよさそうにふくらんでいる。その足元、土に浸みこみきれず、雨がアスファルトに薄い流れを描く。

このまま残りが晴れてくれたなら、申し分のない週末になるというのに・・・梅雨もまた、どこか移り気だ。「せめて初日だけは」と、誰もがそう願う日は、もうすぐやってくる。