アナタは何を・・・ 3

<6/24の続き>

そんな暖色からは少し距離をおいて、深いガンメタの外装に光沢のあるライムグリーンのフレームを光らせて、マシンが一台たたずんでいた。色は異なるけど、鋭い直線で構成されたシルエットは、どこかKTMに近い雰囲気があって、やわらかな曲線で描かれたマシンとは立つ場所も目指すところも違うらしい。マシンの名はH2、KAWASAKIの旗艦モデルだ。どちらかと言えば女性的な姿のKTMとは対極をなす武骨な男っぽさが、いかにもKAWASAKI車らしい。すでに“売約済み”になっていて、“Don't touch”と書かれたカードがハンドルグリップに挟まれている。このマシンをきっかけにして、YAMAHAとHONDAの旗艦へと、話が急に転がりはじめた。

話すのを止めると、途端に店の中が、雨音に支配される。そして時折雷が、けたたましい声を張り上げるようにして、地表に向かい降ってくる。入口のガラス戸はそのたびに明るく光り、雨音はその瞬間だけ、消えてなくなる。雷が静まるのを待って、また、会話が再開する。このH2とは別の方に向いているYZF-R1Mが、来週、店にやってくるという。H2とR1Mが並ぶところは早々見られるもんじゃないし、並んだところで、かえって素性の違いが分かるかもしれないと、まだ見ぬ2ショットを思いながら話が弾んでいく。ただの言葉遊びなのに、なぜか昂ってくる。さらに、HONDAが市販を決定した究極のマシンの名が呼ばれて、その興奮は最高潮に達した。

<つづく>