アナタは何を・・・ 4(完)

その名を「RC213V-S」、MotoGPレーサーRC213Vを公道に解き放つため、ストリートリーガルとして“-S”を配したマシンだ。レーサーレプリカで、レーサー気分を味わう次元じゃない。本当のレーサーを公道で味わってもらうのだという。そのための“-S”、バイク乗りなら気にせずにはいられない。驚くべきは、その“潮流”だけじゃない。正しくは、その潮流ゆえの驚愕の事実・・・21,900,000円という、車両価格だ。むしろ、“3ケタ”ではないところに、HONDAの本気がうかがえる。レーサーの“レプリカ”ではないという事実、血統が純粋であるという事実に支払われるべき金額に、失望ではない大きなため息が漏れる。

世間の底辺では、まだデフレの時代が生き延びている。その気になれば、頭金なしでも新築戸建てを用意できるその価格に、「夢を、憧れを手に入れられるのなら安いものだ」と言い張るか、はたまた「夢は夢、金で手に入れようなんて汚れている」と、青臭く強がるか。これまた経済力に物を言わせる、選ばれた人種にしか許されない世界なのか、それとも安アパートでカップ麺をすすり、フェラーリを夢見る少年と同じ瞳の輝きが引き寄せた、一つの奇跡なのか・・・。小娘に一喜一憂するワタシにはとうてい無理な話だけど・・・障害のない直線でこいつにまたがり、右手を止まるまで回してみたい。できることなら。

そんな21,900,000円が自由になるなら・・・あなたなら何を?