ハナハサク 2

<7/6の続き>

自動ドアを抜けると、変わらず店の中は、橙色に賑わっている。外の重たい湿り気も、空調がうまく消し込んでいて、ひととき雨を忘れる。kunoさんから新品のエアエレメントを受け取り、代わりにinaちゃんにCRF150R-Ⅱのステアリングステムを手渡す。ステムの根本にはローラーに錆の浮いたベアリングが付いたまま、平日仕事しているあいだに、まっさらのベアリングに取り替えておいてもらう算段だ。週末のレースには、「150で走るかもしれないから」と、金曜日までに仕上げてもらうように頼んでから、今度はその草レースを申し込むため、二人に背を向けて橙色のかたまりとは反対の方へ歩いていく。

新作のウェアやらブーツやらがはみ出して、極端に狭くなった入口を、カラダを横にしながらすり抜ける。すぐに色とりどりのモトクロスジャージが飾られた鉄製の飾り棚と、ガラスケースに仕切られたレジが左右に現れる。通路の幅は狭いまま、週末はすれ違うのもしんどいくらいのなのが、平日の閉店間際で客が誰もいないから、窮屈さは皆無だ。パソコンを真剣に見つめてまじめにキーを打ち続けているkubo-chanに、さっそくレースの申込用紙を出してもらうと、「レースねぇ、延期になっちゃう感じですよぉ」と、あっさり打ち明けられた。二階から降りてきたsaitoさんが言うには、「コースが大きな水たまりになっている」らしい。

<つづく>