ハナハサク 3

新しいMX408は、良質な山砂に覆われていて、水はけは悪くない。ただ、くぼ地にあって、水の逃げ場がない。このところの長雨で、さすがの山砂も乾く間がなく、降り続く雨がその上に大きく残されているという。少しはわかっていたつもり、だからCRFを準備していたのに、レースそのものが延期になってしまったのでは仕方がない。「開催日」を空欄にしたままの用紙と、エントリー代の4,000円を一緒に渡して、一人きりの店内をうろついてみる。ナノ“ハナ”の名残の意匠、「RR」の文字がプリントされたグリップパッドをつまんで、もう一度レジに戻っていくと・・・奥の階段から、髪に紅を差した人影が、身をかがめるようにして出てきた。

<つづく>