ハナハサク 4(完)

「パパの時は、あたしがしっかり見てあげられるようになってるからさ」と、縁起でもないことを明るく言い放ち、仏具屋に職を変えていた店の看板娘、大きなお姉さんだ。いつからかまた、この店に舞い戻っていて、今ではすっかり”通販の華”らしい。少し物憂げな匂い、それでも、大きなクリッとした瞳は、さよならした日のままで、「ひさしぶりぃー」と笑うと、時が戻っていくようだ。アタマのてっぺんだけが赤くなっているのを見つけると、「毛先だけだよ、だいぶ色がとれて来ちゃったけど」と、するすると団子をほどいてみせる。ざりままから聞いていたから、別に驚きはしなかったけど、ド派手な演出は、とっても彼女らしい。

商売柄、白い歯を見せたり、大きな声を出したりできない仏具屋は、大きなお姉さんを少し猫背にしてしまった。どこかぎこちない会話は、その名残かもしれない。ryoと二人、練習の帰りに寄り道していたのは、彼女の声が聞きたかったから。ほどよく疲れたカラダに、さらりと明るい声を染みわたらせると、家までの道のりも軽くなったっけ。「たまには電話してよね!」と、肩に紅を揺らしながら、また奥の階段へと消えていくお姉さん。艶と憂いが同居したようなその背中に「じゃあ、いたずら電話するから」と声をかけると、もう一度顔をのぞかせて、ぺろり舌を出して微笑んだ。その笑顔を、赤い髪が彩る。

こんな日だからこそ、艶やかにハナハサク・・・。