金色の・・・5

<7/17の続き>

音量検査のための10分間が過ぎて9時10分、真っ先にコースへマシンを走らせたのは、ざりままだ。乗れているときは、すべてが前向きに転がっていく。つられるようにしてiguchi師匠のCRF150R-Ⅱが、ひと月ぶりの重たい排気音を響かせる。せっかくいつもよりも早く着いたのに完全に出遅れて、走り出すのは走行時間が過ぎてから・・・いつものようにだらしない。そのワタシと85SXが整うまでの間を、ishibashiさんは、ゆっくりとヘルメットをかぶり待っている。「先導するよ」と言っておきながら、このていたらく。それでも彼の笑顔は、最後に会ったときと少しも変わらない。その微笑みに軽く右手を挙げて、スタンドを外したSXのシートにまたがる。太くて短い、無骨なアルミのキックペダルを引き出して、右足を三回、地面に向かって踏み下ろす。サイレンサーからもう一度乾いた排気音がはじき出されたのを聞いて、今度は左足でシフトペダルを一回、静かに踏み込む。85SX、二回目にして初めてのホームコース、思わず右の手のひらにチカラが入る。

<つづく>