あの日のR121 5

短い五十里トンネルは、もうひとつかふたつ、カーブを曲がった先にあるのに・・・。シールドに弾けた雨が、一気に視界を奪うように、辺り一面を飛沫で煙らせる。考える間もなく、カラダはずぶ濡れ。クシタニのカントリージーンズだけが雨をはじいても、濡れて素肌に張り付いたTシャツを伝い、腰から中に滲みこんでくる。シールドにゆがんだ景色が映り、アスファルトがどちらに向いているのかもわからなくなった。

たまらず道を外れて、MONSTERと駆け込んだのが・・・看板に往時の面影を残した廃屋の前。入口だった扉は中途半端に開かれて、ガラス窓はすべて割れて、土色に黄ばんでしまった壁には這うように蔦がからみ、すっかり山の中に隠れようとしている。かすかに覗くコンクリートのエントランス、その上に小さく張り出した三角屋根の下にMONSTERを落ち着けて、イグニッションキーを左に倒した。

途端に辺りを打ち付ける雨音が激しく耳を包み、閃光から降る轟音が鼓膜をふるわせる。

<つづく>