変わるもの、変わらないもの 3

前夜、ryoが帰ってきたその日に組み上げたCRF150R-Ⅱ。その愛機の機嫌が良くない。バラしたキャブレターをうまく組みつけていなかったのか・・・フューエルコックをONにするだけで、オーバーフロー用の黒いビニールチューブから地面にガソリンが流れ出す。センタースタンドに載せたまま、ryoがエンジンをかけても、漏れるガソリンの量が変わらない。あわててコックをOFFの位置に倒して、ryoをシートの上から追い出し、FCRの下側をドライバーの柄で思いきり叩いてみる。もう一度コックをONに戻すと、またガソリンが流れ出す・・・。9時10分を過ぎて、もう最初の組が走り出す時間だ。ざりままにiguchi師匠、nagashimaパパも、すでにコースに排気音を響かせている。すっかり身支度を終えて、ヘルメットまでかぶっているryo。この日を楽しみにしていたその瞳が弱々しく曇る。すぐに「こっち乗ってこい」と、85SXに視線を移すと、その顔に笑みが戻った。前後ブレーキの利き具合と、リヤのリンクレスの感覚を伝えて、ROCKSTARと書かれた背中を送り出す。期せずして聞くことになった85SXの乾いた高音が、竹やぶで跳ね返り、耳の奥にこだまする。

<つづく>