真夏の最後に~たったひとりのイエローフラッグRT編~

matsunagaさんに洗車機を借りて、さっぱりした85SX。最後の10分をチカラいっぱい走りきり、リヤアクスルにかませたスタンドで傾げる愛機を、イスに深く腰を落としてぼうっと眺めているときだった。長身の体躯がふらっとやってきて、醜く折れ曲がった痕の残るフロントフェンダーに指を這わせながら、にこりと笑いかける。saitoさんが富士の麓に出かけていった今日は、臨時の日雇いスタッフ。イエローフラッグレーシングの復活だ。慣れた手つきで受付仕事をすませてからは、スターターとチェッカーの二役をこなして、まんまsaitoさんの代わり。途中、コースのど真ん中、フープスの先でマシンを止めてしまったYZ250Fを助けに行ったり、最終コーナーでバタバタと倒れる子どもたちを見つけては黄旗を振ったり、彼が居ると、まるで昔のコースに戻ってきたようで、安心して回っていられる。

「オヤジ、だいぶイイ感じじゃん」

つたない走りをほめてくれるのは、旧いMX408の頃からmachi-sanぐらい。周回するたびに視線を合わせては、また見ていてほしくてカラダ全体にチカラが入る。彼のこうした一言に支えられて、前を見つめてスロットルを開け続けるワタシが居る。喰い付きのいい路面に助けられたことは黙っておいて、気持ちのいい部分だけをかみしめて、思わずこぼれた笑みを隠さずそのままで返す。85SXを楽しげにのぞき込む横顔を眺めていたら、跳びたくても最後まで跳べなかった、ダブルジャンプを思い出した。ヒザが壊れる前、machi-sanが居たら、コースサイドで黄旗を携え立っていてくれたら、そして、ずっと見ていてくれたら・・・もしかしたら跳び越せていたかもしれない。あの右のタイトコーナーの手前に並んだ、2つの山を。