スプラッシュな木曜に、GROMで。

今まで聞いたこともない「線状降水帯」とやらは、南から北へひっきりなしに積乱雲が駆け抜けては雨を降らせ続けるという、晴れも雨もすべて西から東へ走っていくと思っていたこれまでがまったく通用しない気象現象。その降水帯の真下にあった我が家は、夜半の雷雨ですっかり水に浮かんでしまった。庭からまっすぐ延びた路地のアスファルトにも、隣家の姿がくっきり逆さまに映る。どうしても都内まで出て行かなくてはいけない日に、辺りは水浸し、クルマが出るに出られない。駅までバスで向かうしかないかと思案をしていたら、頼みの電車がすべて運転を見合わせているとテロップが流れた。残る選択肢は二つ、雨を言い訳に休むか、バイクで走り出すか・・・。

5分ほど考えて向かったのは、ガレージの中。ひさしぶりのフルフェイスヘルメットを抱え、バイクショップのキーホルダーにぶら下がったホンダのキーを手に戻ってくる。足下には去年ソールを張り替えたばかりのブーツ、上に羽織るのも同じクシタニ製のゴアテックスジャケットだ。もう何年も着てこなかった古い橙色のカッパに袖を通して、大きな雨粒が落ちてくる庭先へ明るく踏み出す。keiの愛車フレアワゴンの後ろから、小さなGROMを引っ張り出す。濃い黄色のタンクカバーは、見る間に水滴に覆われる。RAPIDEをかぶり、ライトスモークのシールドを落として、ゆっくりギヤをつないでやる。水の抵抗を押しやり、フロントタイヤが激しく水しぶきを上げて、GROMが突き進む!