イリュージョン 1

端からリヤブレーキをあきらめるなんて・・・今はもうできないさ。

そうわかっているはずなのに、どこかネジのはずれたアタマは、邪なアイデアに色をつけ始めた。夜から降り始める雨が金曜日まで残ってしまうというから、我孫子の仕事場に置きっぱなしにした軽トラを持って帰るため、GROMを走らせる時機は、今日しかない。

ほとんどの道を警察沙汰にすることなく、淡々と走り抜ける4スト125ccの単気筒。一応二人乗りができる長さは確保されているけど、路面と近いところに位置するシートから繰り出される脚は、大きくヒザを曲げて靴底をアスファルトに接地させる。

12インチの小径タイヤだけは、少し不安に感じてしまうけど・・・ちょっとした遊びゴコロを試すには、これ以上のマシンはない。いつものスーツにクシタニ製のゴアテックスジャケットをかぶり、空と同じ色をした通りに向かい、右手を思い切りひねっていく。

<つづく>