イリュージョン 2

馬の背を思わせるゆるやかな曲線には、どこまでも黄線が続いている。前をふさぐ牛のようトラックもいなければ、後ろからつついてくる狐のようなスポーツセダンも、今朝は見えない。加速するGROMの上、試しに左のステップから足を離して、そのまま外へ下ろしてみた。車体はほとんど垂直、デジタルメーターはまあ、守らなきゃならない速度よりも十の位が一つだけ、繰り上がっている。それだけだ。

シートの真ん中に据えた上半身が、一瞬、左に振れる。左右の均衡が崩れるのはわかっていたけど、右に曲がっていくと思っていたから、カラダが強ばる。なぜなのかは、どんなに考えても、このアタマでは答えが出ない。「それでは」と、今度は曲げる気満々で、もう一度上半身と一緒に右足を大きく外に張り出してみた。強いジャイロを生まない両輪と、慣性の小さな移動体は、わずかな重量と均衡のズレを逃さず、過敏に反応する。