イリュージョン 3

<9/17の続き>

カジュアルブーツのゴム底が、アスファルトに軽く当たる。荒れた路面に引っかかりながら、弾むようにして流される右足が、GROMのステアリングを薄く右に引きずっていく。浅い角度で黄線を越えていったところで、右足をステップの上に戻し、左の肩を路面に向かって落としてやる。我に返ったマシンが、黄線を離れて、車線の“定位置”で加速を続ける。感じはわかった。次は本番、右カーブで試してみる。

県道をつないでいくと、緩やかな曲がりだけで、カーブはひとつもない。あるのは交差点だけ。それも左折。こんな時は、畑の中からゴルフ場をすり抜け、小学校と中学校を続けて通り過ぎていく裏道がいい。ちょっとした高低差をS字で結ぶところは、そこだけ峠を走っている気にさせてくれる裏道は、走るクルマもほとんど居ない。この裏道にあるクランクの真ん中が、直線からの右コーナーになっている。

木々の間から一瞬ヒカリの中に出て、左に曲がり、ギヤを一つ上げると、今度は右に大きく曲がり込む。小学校の校庭を取り囲む垣根のせいで視界は利かないけど、角度は90°。路面は少しだけアウトにせり上がっていて、マシンを預けやすい。右手を全開にして立ち上がった短い直線で、簡単なブレーキングをすませ、予定どおりに右足を真横にダラリと垂らす。GROMが左から右へ、フラッと動いた。

<つづく>