彼岸 5

誰もがキャブの不調、と言うよりはワタシの整備不良を信じて疑わない。一番の近道は、もう一度FCRをバラして組み付ける。ただそれだけのこと。なのに、このマシンとキャブレターの組み合わせは、その気持ちをすっかりくじいてしまう。CRF150R-Ⅱの真横にたたずむKTM85SXは、クランクケースリードの2ストローク。目を凝らさなくても、ガソリンタンクとエンジンとの間に、反対側の景色がよく見える。そのまま視線をCRFに移すと・・・ホースやらコードやらがあちこちから延びていて、ヒカリが漏れる隙間しか見当たらない。ケーブル一本で直接スロットルバルブを動かすだけの簡単な作りなら1分もあれば車体から取り外せるけど、こいつはガソリンタンクをはずすところから始めないと始まらない。はっきりと二の足を踏んでいるワタシの目の前を、細身のモトクロスウェアが通り過ぎていった。

<つづく>