彼岸 7

乱れた音をけたたましく散らしながら、黒装束のCRFがホームストレートを駆けていく。第1コーナーで反転すると、今度は小さな車影から直接パドックに向かって、不作法な排気音をぶつけてくる。ギャラリージャンプの傍らに立ち、あらためてそのryoの愛機を目で追いかける。狭い林の中では破裂音が辺りにこだまして、かなりやかましい。坂を下って2つ、テーブルトップジャンプを軽くいなしてフープスへ入ろうとするCRF150R-Ⅱ。近づいた排気音は、輪郭がすっかりぼやけていて、ただの雑音にしか聞こえない。連続したコブを苦しげに抜けて短い直線に出ると、ばらついたエンジンを大きくひねった右手で合わせるkusabaさん。その感性で何とか耳になじむ旋律にすると・・・直角の右カーブに続いたテーブルトップをなめずにふわりと跳び上がる。ポンコツをあっという間に意のままに操る小さな背中が、最後の林にやわらかく消えていった。

<つづく>