まだ見ぬ明日へ 3

バイク雑誌ではなく、あえて旅行雑誌から行き先を拾い出すことが、何かとても大人な所作のような気がして、走りよりも仲間に今で言うサプライズと、そのサプライズを24撮りのフィルムにうまく切り取ることが楽しみになっていった。マシンも2ストロークから4ストロークに変わって、旅に出る思いも移ろうようになって・・・その小さなため池に出会ったのは、ちょうどそんな頃だったかもしれない。

インターネットが未熟で、情報発信の主役は紙が普通だった時代。『森と湖の散歩道』のタイトルでポストに届けられた本の中に、その色付いた静けさがあった。水辺を彩る落葉樹が、岸を境にしてそれぞれ空へと延びている。川霧のような白濁が薄く、透きとおった秋の空気と一緒に流れていて、ひんやりとした雰囲気まで写真サイズのその中に閉じこめられているようだった。

<つづく>