ヒカリの季節の底

さして厚みもなさそうな明るい灰色の雲に覆われて、空がまあるく伸びている。破れかけた雲間から覗く太陽は、ぼやっと白く滲んでいるだけ。ひばりが騒がしくもゆっくりと、その低い天空をめざし、必死に近づこうとしていた。曇ったおかげで夜露もおりていないから、目と耳だけなら春を感じる朝。首筋をなでる風だけが、ひんやりと冷たかった。

Tシャツにパーカーをかぶり、シロとネロを相手に駆け回っても、汗ばむことはなくなった。秋分の日からひと月。ヒカリの時の底に向かって、季節がいきおい転がっていく。