雨の最終戦 2

<11/8の続き>

午前中にレースを走るなんて、思ってもいなかった・・・。

110(ワンテン)のレースをみているうちにグリッドが埋まってしまって、#41を着けたCRF150R-Ⅱは、わずかに残った隙間に収まるしかなかった。左端から2番目にフロントタイヤをねじ込んでいくと、そこは奇しくもnatsunaga師匠とざりままの間。そのままフロントタイヤが落ち着くところまで前に出ると、コの字を倒したバーとの距離は、ちょうど拳を縦にしたくらい。イヤな感じのする距離だった。

予感めいたものがなかったわけじゃない。デジャブ、それも感じてた。ただ、練習走行で曲がらなくなった左ヒザを、わざわざねじってまでシートから降りて、マシンを後ろに下げることはしたくなかった。午前中だけは我慢してくれるずだった空からは、受付の始まった頃からずっと、雨粒が大きく落ちてきていて、見上げたゴーグルレンズに丸く弾けた。

なじみの薄い4スト150ccに、練習できたのは20分だけ。何かが少し足りなくて・・・そんな気持ちの揺れを奥にしまい込めないうちに、5秒前のボードを下げたiguchi師匠が、コースサイドに走り去った。スターティングバーの付け根にある錆びた引き金のようなピンを見つめていると、暖まりきらないミッションオイルが、フロントタイヤを少しずつ、その錆び色のバーに近づけていた。

<つづく>