それでも開けて走る 9

1周回ってきて、また同じ坂を下るCRFに、まったく勢いはない。いくら回ってきても、うまく駆け下りることができなくて、減速しすぎてジャイロを失ったホイールがマシンを蛇行させては、ふらふらとコースの外へと誘い出す。もしかしたら自分よりも下手な奴は居ないんじゃないか?と思うほどに、勇ましいのは響く爆発音だけ。右に左に行ったり来たりを繰り返すマシンは、少しも前に走ってくれない。バーにしがみついてばかりで、すっかりチカラの入らなくなった右腕が、saitoさんのチェッカーを受けてようやくグリップから離れる。ひどく長い20分が終わった。

<つづく>