ヒビキ 2

<12/13の続き>

休講になった授業が昼の前後ともなれば、若さにはとてつもなく長い時間を持て余すことになる。東京の西の外れ、広い構内を出て行っても、あるのは動物園と遊園地。仲間が揃えば雀卓を囲むこともできるが、いつも4人揃うとは限らない。たばこと缶コーヒーと、おしゃべりだけでは、間が持たないこともある。ヒビキは、あの頃のワタシにとって、RZ250のタンデムシートを知る、数少ない友人だった。

彼女のいないワタシと、遠距離恋愛の彼と別れかけのヒビキ。二人は、互いに互いを男女とは認めつつも言葉には出さず、クラスメートの垣根を越えることもなく、笑って4年間を過ごした。同じ英語科の教職課程を履修する二人は、第二外国語も同じ独語で、ずっと同じクラスのまま。だから、同じように休講に出くわすのもめずらしくはない。その時間を潰すのにタンデムをねだったのは、ヒビキの方だった。

<つづく>