冷凍みかんの似合う色

直角に立ち上がった背もたれへ、ぴたりと背中を這わせて、窓から外を眺める。駅舎もどこかのんびりした風情で、午後の陽だまりに女子高校生が二人、これとは行き先の違う電車をじっと待っている。ひなびたツートンカラーにどこか惹かれてしまうのは、幼い思い出とか埃混じりの時代の影とか、そんな郷愁につつまれている感じがするから・・・。

別に鉄道好きなわけじゃないけれど、乗り鉄と言われる輩の気持ちが少しは分かった気になる。嵌め殺しの窓に馴れてしまった瞳に、陽射しを受けた銀色のつまみがまぶしく映る。手のひらを二つつなげたほどの折りたたみ式のテーブルを引っ張り出し、窓を開けて売り子さんから、冷凍みかんを買って食べたくなった。そんな時代が、ずっと昔、確かにここにあった。