少しは借りを返せたかな 4

<2/12の続き>

そして、三周目。自分のカラダとコースの具合と、マシンの吹け上がりがわかってきたところで、スターティンググリッドの前にSXを止め、青い車影に目を凝らす。地面にまっすぐ下りた左脚、ヒザは何事もなかったように伸びきっている。コースをさまよう視線の先、ブルーのゴーグルレンズの片隅に、最後の坂を下りるYZ85が映った。

キックペダルを引き出し、圧縮が抜けたような踏み応えのまま蹴り降ろすと、三回でエンジンが回り始める。ちょうど二つ目のギャラリーテーブルを跳び越えて、nagashimaさんがまっすぐこちらにYZを向ける。フィニッシュテーブルの上、かすかにヘルメットが左に動いた。ギヤを1速にシフト、スロットルをあおる橙色に気がついたらしい。

最終の左カーブをインベタでなめらかにたどり、一瞬こちらにゴーグルを合わせてから、第1コーナーに向かい細い金属音が爆ぜた。

<つづく>