ビッグエッグの見える街で

電車に乗って我孫子を離れたときは、確かに灰色が空いっぱいに広がっていたはずなのに。水道橋の駅から歩いて出てみれば、強いビル風が辺りを舞い、空は青く突き抜けていた。濡れて黒ずんだ木製のベンチが、さっきまで雨が落ちていたことを教えてくれるけど、風はそんな湿気た感情を吹き飛ばして、ビルの壁を伝い、天空へと駆けていく。楽しいばかりの毎日じゃないことぐらい、よくわかっている。ただ、空の青さに、少し目を細めてみるだけ。ちぎれた綿雲が、風の路を颯爽と流れていく様に、両手を広げて、大きく息を吸い込む。かすかに緑の混じった、若い匂いがした。