贅沢な日曜日 3(完)

防音用の土手を積み上げるため、えぐるように削られた最後の登り。アウト側がぐるりと垂直に切り立ち、西に傾げた太陽と相まって、一瞬ヒカリを失い視界も暗く奪われる。モトパーク森を思わせる闇と隘路、途中のコブに悩んでいるうち、真後ろに野太い排気音が張り付いた。ざりままにはない接近に、早くもSXのリヤタイヤが揺れて流れる。そして、こちらも防音壁の犠牲になった一つ目のギャラリーテーブル。その代わりに現れた、嫌らしく尖ったシングルジャンプが、二人を苦しめ出す。

最後のクールを競い合うのも、今ではなくてはならない、このところの「お約束」。ただ、今日はどうにも分が悪い。「午後から走り始めたんだから」、「セッティングが薄すぎて」とヘルメットの中、言い訳はいくらでも思いつくけど、思い裏腹、そう簡単に前を譲るわけもない。左足で休みなくシフトペダルを掻き上げ踏みつけ、左の人差し指を間断なく動かして、かすれた排気音を途切らせないように#148を背にしたまま、薄暮の陽に染まり始めた10分を走り続ける。

2016.7.10 MX408 KTM vs CRF

Special thanks to yellowheart76.

仕事に邪魔され、午後だけの3本。わずか50分に3500円も払って、贅沢すぎる日曜日。しかも最初から、いきなり本気。そして、最後にまた、CRF150RⅡとのバトル。過ぎてみれば存分に、それもかなり贅沢な時間になっていた。前を走りきってパドックへと折り返す気分を、風がやさしく撫でていった。