二つの背中に 5

気づけば65ccを走らせていた子どもが居なくなり、コースの上は、たった二人。少しばかり滑りやすくなった路面に顔をしかめても、条件は二人とも同じ。いつもと違うのは、SXが後ろに着いていること。この状況に慣れていないのか、いくどか#148のCRF150RⅡが立ち上がりで暴れる。ただ、一気に崩れたりはしない。それどころか、こちらが同じところでマシンを揺らしていては、その蛍光オレンジの背中は離れていくばかり。彼にも少し楽をさせてしまっているらしい。

素直にギヤをひとつ落とせばいい。なのに、その勇気がないから、すべる路面を半クラッチでごまかしながら、2連の一つ目に挑む。それでもリップの立っているところを狙うようにして斜面へ・・・少しずつコツをつかんできた4ストローク150ccと似たような場所に落ちて、まっすぐその背中に気持ちを向けて右手を捻る。その肩越しからフィニッシュテーブルの上、マイクを片手にsaitoさんが何かを叫んでいるのが見えた。

<つづく>