二つの背中に 6

<7/23の続き>

最終コーナーに向かう短い直線、ざりままが右の人差し指を天に向けて、コースに浮かべている。追いつめる時間は、もう少ないようだ。小さくうなずき、右手でスロットルを軽く開けたまま、リヤブレーキを引きずるようにして車速だけを落とし、苦手な最終コーナーを勢いよく回ってみせる。第1コーナーだけじゃなく、好きな408コーナーもレースさながら、小さくインベタで回り、マシンを起こしながらスロットルを大きく開く。確実に近づいたその背中を、フープスで一気にたぐり寄せるため、リヤタイヤをすべらせないようにできるだけ優しくブレーキペダルに触り、マシンを左に寝かせたまま、最初のコブに入っていく。まだまだラインを多く持たない彼は、ここを右から左へ、アウトからアウトへとつないでいく。

<つづく>