二つの背中に 7

<7/25の続き>

左から右へ。彼とは真逆のラインでコーナーのインとインとを斜めにつなげば、ゴーグルレンズが見る間に蛍光オレンジに染まる。わずかに早くCRFが、アウトから加速を始めて、轟音がヘルメットを叩く。他に聞こえる音もなし、左の人差し指が無条件に反射して、その音の鳴る方へとSXを寄せていく。逃したワンチャンス、あとは自滅を待つか、最後にひと勝負するか・・・めずらしく冷めたアタマで、連続するテーブルトップを越えると、一瞬パドックから音が消える。

暗がりからエグゾーストとともに姿を現す2台。距離もオーダーも変わらない。迷いを抱きながら、もっとも苦手にしている下りきった後の左回り、そしてテーブルトップをうまく跳び上がり、最後のストレート。そのウェーブに向かってスロットルが止まるまで手前に捻る。真ん中からアウト寄り、ベストラインの上を、蛍光オレンジが弾んでいく。それでも、まだあきらめた訳じゃない。その背中を直角コーナーのバンクへと押しやるようにして、ついひと月前までは、そこしかなかったはずのインベタのラインに、SXのフロントを向けていく。

<つづく>