2年ぶりに榛名の夏 4

掛かりの悪さは、まったく変わらず。それでも何とかいいところを探そうと、スターティンググリッドの前でいくつかの円弧を描いてから、全開で第1コーナーまでの短い距離を加速する。連続ジャンプをひとつずついなして、通称「バス停ジャンプ」を大きく跳び上がる。SXの上質なサスペンションを持ってしても、左ヒザには衝撃が残る。ただ、あと少しの勇気が、なかなか出てこない。それよりも勾配のついた斜面に、何かが足りない。それは、続く長い上り坂、気持ちよく駆け抜けていけるはずの直線で、はっきりわかった。いつものチカラが・・・ない。

おまけに、一度回転を落としてしまうと、半クラッチだけでは戻ってきてもくれない。止まるような速度に落ちる裏山のカーブで、何度もエンジンを止めてしまいそうになるSX。急勾配を下りていく間にも、回転を落とさないように、そしてクラッチを切らないように、神経を行き渡らせる。湿気た路面のことなど、すっかり忘れてしまうほど、愛機のチカラは頼りなかった。そして、そろそろ戻ろうかと挑んだシングルジャンプ。その手前、パドックを右の視界の片隅に見ているとき、足下のエンジンから、小刻みに金属を叩くような音が聞こえてきた。チカラなくジャンプを跳び出すと、その金属音も消えて、すぐにガス欠を起こしたように大きなエンジンブレーキが車体を包んでいった。

<つづく>