かすみがうらの空 3

右手に現れたカートの練習場に目をやっていたら、2台ともあっさり行き過ぎた。ハザードを灯しながらゆっくりバックで戻っていくと、雑木林の切れ目に「774 compound」の看板が見える。でもここは、臨時の駐車場。いつもならFMXの連中が華麗な空中技を練習するところで、本当の目的地は坂をもう少し下ったところにある。「せっかくだから」と“臨時”をやめて、2台並んで走っていくと・・・また通り過ぎた。ただ、今度は助手席のガラスを覗きこまなくても、背の高い木立の真下に塗装したばかりの受付小屋がしつらえてあるから平気だ。もちろんそこには、あの懐かしい顔がはにかむように笑顔浮かべて佇んでいる。気の早い顔見知りがもう、狭いパドックにトランポを突っ込み、それぞれのマシンを降ろし始めていた。かすみがうらの空は、どこまでも乾いていて、とびきり青かった。

<つづく>