ツインだけの三重奏 前編

モトクロスを始める、ちょっと前のこと。hideさんとmuraと三人で、週末の峠を流すのを楽しみにしていた頃に一度だけ、その鼓動を味わったことがある。

ワタシのDucati M900Darkをきっかけに、hideさんはYZF-R6をmuraはGSF1200を手放して、それぞれレアなツインを手に入れた。それは個性なのか、単なる意地なのか。2気筒のマシンは三車三様、VにLにパラ。排気量も750、900、1200とバラバラもいいところ。とにかく人と同じ系統をけして選ばないのは、何とも旧いバイク乗りのやり方だ。早朝に街を抜け出してからは決まって先頭を走るワタシのMonsterをhideさんのLightningが交わしていって、そこから“ウサギとカメ”。少し、そうコーナーひとつ分の距離をはさんで、muraのStrikeが追いかけてくる。そして、道がまっすぐ平らになると、ひとつ目のコンビニエンスにまとめて吸いこまれていって、ブラックの缶コーヒーに煙草を一本吸いつけ、マシンに火を入れながらもう一本。いつも、その繰り返しだった。

<つづく>