信尹

生まれてこれまで、そんなことを言われた記憶がない。見つめていた視線がその顔から離れて、ふと宙をさまよう。「好きにすれば」と吐き捨てられたことはあるけれど、手がそっと肩に触れて言葉をかけられたことは、ついになかった。

史実なら齢四十八の信繁も、その言葉を聞かされて大いに勇気づけられたはず。ワタシにもそんな叔父御が居たなら・・・と思ってみても、詮無いこと。それなら自分で自分の背中を押してみようか。一言、「生きたいように生きよ」と。