良いお年を

西の空へ静かに陽が落ち、秩父の山並みが黒く連なって浮かび上がる。染まる杏色に、かの霊峰がその裾を広げてみせ、野火が薄くたなびいて、その彼方に上弦の三日月が細く映る。アスファルトがBongoのヘッドライトに照らされ、通りが宵に呑まれていく。

暮れゆく大晦日、何かをしようとして何もできなかった気持ちになるのは、いつもと変わらない。月影を遙かに見下ろし、宵の明星がひときわ強くヒカリを放つ。漆黒に包まれる空に、かかる雲はない。明日も陽射しにあふれた、いい日になりそうだ。