春不遠

陽の落ちた跡が、瞬く間に蒼く褪めていく。宵闇に色を失いながら空は、雲を黒くたなびかせている。西に浮かぶ三日月だけが、残り日に、ふくよかなその輪郭をうっすらと映している。

ヘッドライトがアスファルトを眩く照らし出す。道端から伸びた桜のつぼみが、風に震えて見える。そして、ようよう沈んだ宵に雲は白く、月は彼方の綺羅星を引きずるようにして細く、冴えていく。

春の陽気も、この風にすっかり流されて、明日にはまた、冬が戻ってくる。行きつ戻りつ、春不遠。