冬空の下に集いし 3

「ああ、上に上がるジャンプねー。やっぱり怖いよなぁ」

YouTubeにあがった動画を見るなり、事も無げにそう言われたと、大きな背中が笑い出す。そうだ、地上から高く跳び上がるのは、それだけで誰でも怖いんだ。それを頭ごなしに「いけるだろ」とは、よく言えたもんだと、また笑う。見上げる上背とは裏腹な、こうした普通な感覚に、その笑みはよく映える。それでも今日は・・・もう跳ぶしかない。きっと乾いた口元から荒く息を吐き、左コーナーのアウトを静かに大きく回っていく。

少し丸めた背中から細い腕がゆるりとハンドルバーに添えられている。眺める後ろ姿は、うまくチカラが抜けているようにも見える。そして、ためらうことなくYZ125が斜面を這い、小さくうめいたかと思ったら、フロントタイヤが一気にリップを跳び出した。一瞬、音が消えてなくなり、ステップの上、青い背中がさらに濃い青へと伸び上がる。きれいな放物線がテーブルトップの向こうに消え、リヤタイヤはひとつの埃も立てなかった。

<つづく>