春まだ浅き ~後編~

シフトペダルを踏み込み、GROMでアスファルトを蹴り出す。原付二種のゆるい加速が、ほどよい加減で通りを駆ける。空は霞んで、陽射しの輪郭も、路に落ちる陰も、うっすらぼやけて続いてく。法定速度を超えようと流れていけば、襟元のわずかに露わな首筋に風が冷たく触り、ジャケットにくるまれていた温もりが真後ろに剥がれていく。しばらく走って、赤信号の日だまりに停まると、タンクを挟んだヒザの間から、そして肩口に降る陽射しから、のんびりと温もりが戻ってくる。信号が青に変わり、先頭を切って走り始めればまた、首に風が当たり、突き出しているヒザの先から、冷気が伝ってくる。

その繰り返し。

浅き春を泳ぐように、雲ににじんだ陽を仰ぎ走る。