春の色

緑葉が雨を丸くいくつも湛えては、吹く風にまかせて、ひといきに地へとまき散らす。温く湿った春風の朝に、菜の花が曇天の底を黄色く照らしている。いたずらにその花の束を払うと、滴がはじかれ飛んで、パンツの裾に小さな染みをいくつも着けた。

週の初めに手にしたスプリングコート。昨日はそのコートに、そして今日はジャケットに・・・袖を通すのがためらわれるほど、冷たく締まった朝は、いつしかいなくなってしまった。街をにぎわす桃色も気づけば、透きとおる緑に変わってしまう。

色は移ろい、立ち止まらない。