Another tomorrow 3

一夜が明けて、けだるさの向こうに、艶やかな影が浮かんでいた。北陸の雪は、いつしかガラス戸を叩く雨に変わっていた。夕べのことが、伏せた彼女の瞳に赤々と灯されている。シーツを剥いで、やわらかなふくらみに頬を寄せると、少しひんやりしていた。アタマがぼうっとして、彼女の言葉がうまく聞き取れなかった。

長旅と、髪を濡らしたままタイヤチェーンを外していたせいで、すっかり風邪を引いたらしい。途中、風邪薬を買い求めてからは、彼女にハンドルを預けて、助手席に身を屈め込んだ。山越えはできないから、南アルプスを大きく迂回するルートを選んで、あとは彼女に揺られるまま、ウインドウの雨粒を飽くことなく眺めていた。

<つづく>