晩春の候 3

午後の一本目は決まって、走るマシンもにぎやかになる。最終コーナーを立ち上がる、いくつものフルサイズマシン。その隙間を見つけ出して、土煙の中に走り出す。2速に入れたまま右手を捻れば、わずかな動きに車体が反り返るように跳ねて、背中が後ろに置いていかれる。第1コーナーの入り口まで、スロットルを開けては閉じてを短く繰り返す。そのたびに持ち上がったフロントタイヤがすとんと落ちて、固い路面をグリップに伝えてくる。

<つづく>