進入と、脱出と 3

<5/31の続き>

その音に急いて1速まで落としきれずに、2速でゆらゆらと小さな弧を描く。左足を出さずに木の根元を回り込むのは、先週教えてもらったライン。そこから次のアウトバンクに向かって半クラッチを当て、短く加速する。踏みつけたブレーキペダルがリヤタイヤを泳がせ、RM85Lがバンクの途中で一気に向きを変える。折り返した真正面に、コーナーのインを切り取るCR85改が映った。

サイドカバーのゼッケンを見せつけるように鋭くカットイン、立ち上がるまでの一瞬の間が、RMを先行させた。ゴーグルレンズ越しに、瞳が笑っている。少しの間、前を走らせてくれるようだ。それなら「いけるところまで」いくだけ。握り直すことのないスロットルを捻り、ステップアップを跳び越え、4速、5速とシフトペダルを蹴り上げて、思い切り高く遠くへ、RMと一緒に大きな放物線を描いてみる。

着地の衝撃を背中で受け止めながら、もう一つ跳び上がって最終コーナーへと加速。一瞬離れたエキゾーストが、コーナーのずっと手前で真後ろに張り付いた。

<つづく>