進入と、脱出と 5

置いていかれたら、先に逃げ出すわけにもいかない。

しびれた右腕をバックストレートエンドでぶらぶら振っては、だんだんと離れていくCR85改の、その音だけを頼りに食い下がる。それからどのくらい周回したのだろう、どのコーナーでもブレーキングがいい加減になってきて、時々アウトバンクを飛び越えそうになって・・・もうヤバいか?と深呼吸を繰り返していたら、最終コーナーで右手を挙げて、CRがコースを出ていった。肩を下げ大きく息を吐いて、素直にその後ろに続いていくと、パドックを埋めるトランポに、林の影が長く垂れてはじめていた。

<つづく>