進入と、脱出と 6(完)

RM85Lにサイドスタンドをかませて、汗に濡れたヘルメットを脱いでいると、背中から低い笑い声が聞こえてきた。「進入と脱出の速さがまるで違う」と、ワタシとkyo-chanの走りを見ていた#2さんが、はっきりと言い切ってくれる。最終コーナーとフープスの前後、右でも左でもどこも同じように、リヤタイヤにぶつかる勢いで詰められては、立ち上がりで真横に並ばれていた。それは、音を聞けばだいたいわかる。まったくコーナーリングができてない、マシンの倒し込みも中途半端。それもよくわかってる。

「だいたい50cmぐらいズレてるねー」と、スネークの最初の立ち上がりにじっと視線を落としていたmatsunagaさんが、続けて口を開いた。この50cmこそ、RMが左に傾げている間に、kyo-chanのCRが右に加速していく理由だ。その同じラインに乗せられずにいるワタシを、「もう少しゆっくり入れれば、走れるんだろうけどなぁ」と、やさしく癒してもくれるmatsunagaさん。今日初めて味わうビッグテーブルトップの斜面に向っては、愛機のKX100を幾度も静かに宙へと舞い上げていた。

その愛弟子のoowariさんに「直線の開けっぷりは見事!」と言われても、それはハイスロのおかげでしかなくて、気恥ずかしくなるだけ。ただ、そうした長いストレートを持つMOTO-X981の爽快さは、やっぱり格別だ。一人だけ走りを褒めてくれたoowariさんに密かに感謝しながら、RMのガソリンコックをOFFに倒して、心地よい痺れをパイプチェアーに包んでもらう。見上げれば、ミニモトが集まってきたかすみがうらの空に、いつまでも笑い声が響いていた。