初めての夏 3

ビールのホップか焦げた肉片か。

それともただ、笑いすぎただけなのか。

今度はほどよく脂の残った豚ロースをつまんで、苦く乾いた喉にまた琥珀で流し込む。木から木へとぶら下がった灯りは、いよいよ夜に映えて、テーブルの上が、アルミの缶で埋められていく。YouTubeがさっきからずっと、昭和を賑わせたミリオンヒットを流し続けて、ワタシより一回り年下のニセマナブだけが、まったく乗れない顔で、独り肉をほおばっている。

そのカレが、女性専用車両に乗り込んでしまった時のことを話し始めた。そんなどうでもいい話が、どうして始まったのかもわからない。でも、みんな大きな声で笑っている。幼い頃からモトクロスを走ってきたkyo-chanが、キッズ時代を振り返っては、matsunagaさんが、それをすっと遡る。「A型とB型がAB型を産んだの」と鼻を膨らませたざりままの隣で、A型のざりぱぱが違うことをしゃべりだして、独りで笑っている。こうなると新参者になってしまうkojimaさんに、saitoさんが真っ赤なコークを黙って手渡した。

そして・・・ここに居ないはずのkenyaさんが、パドックの武勇伝で話を盛り上げると、夜会の灯がゆっくりと落ちていく。「一緒に走るのが居ないと・・・モトクロスもつまんないよね」、誰かが静かに笑った。

<つづく>