初めての夏 4(完)

二つの明るいライトが続けざまに砂利を踏みしめていく。

クラブハウスからこぼれる灯りが届かなくなると、手にしたマグライトだけが頼りになる。真っ暗なパドック。目の前の町道を走るクルマもなくて、どこまでも続く静けさの中、青いSIERRA DESIGNSのテントだけが一歩一歩近づいてくる。

フライシートのジッパーを上げて、そのままポールに巻き付ける。前室にカラダを屈めて、ジッパーのとおりに右手で半円を描くと、薄いリップストップナイロンが、テントの内にパサリと落ちた。

そのままアルミのロールマットに寝ころぶと、温いビニールの臭いがした。メッシュを抜ける夜気が、ほんのり湿っている。MOTO-X981で過ごす、初めての夏。この夏の夜がまた、懐かしい話のひとつになる。瞳を閉じた耳に、夏の夜の声がそよいでいた。