「やっぱ、楽しいわ」

シートの後ろに腰を「く」の字に引いて、ステップに立ち上がったまま、最後の右カーブへとYZ125を走らせる。アウトバンクいっぱいに車体を翻し、左指をクラッチレバーにかけてリヤタイヤを操り、林の先へと落ちていく。途切れ途切れに届く排気音が荒れた斜面から跳び上がり、第2コーナーをルーストとともに駆け抜ける。乾いた2ストロークサウンドがテーブルトップの向こうで折り返し、背中に「KOUTA」の文字と「114」と描かれたONEALのジャージが、目の前のフープスを小気味よくいなしていく。いつしか雨も消えて、雲の割れた空から夏の陽が、ぼんやりとのぞき込んでいた。

<つづく>