真っ赤な女の子

最終コーナーから立ち上がるCRF250Rが、コースインを待つRM85Lに気づいて、少しだけスロットルを戻した。そして、視線をこちらに向けたまま、目の前をゆっくり過ぎていく。ヘルメットを傾げるようにして視線を交わしスロットルを煽ると、色の付いたゴーグルレンズの奥で、あの大きな瞳が笑った気がした。

回転の落ちる前に左の人差し指と中指を放してクラッチレバーをリリース、誘われるまま「MANAMI」と描かれた背中へと右手を捻る。今日はカメ、カノジョのお手並み拝見だ。第1コーナーに続く荒れた路面に4と2の音が入り交じって跳ね返り、右回りのすり鉢を、2台がまったく同じラインで立ち上がっていく。

<つづく>