真っ赤な女の子 6(完)

ビッグテーブルを跳ぶまでは、たしかに後ろを走っていたはずなのに・・・。

着地して荒れたストレートの先、左から右に切り返してシングルジャンプにかかる、そのたもとでコースを離れていく車影。ひとつ下がって左にタイトターンを決めると、CRF250Rがゆるやかに、自分たちの所場へと帰っていくのがわかった。鉄製のランプが反り返る、そこがカノジョの居るべき場所、帰るべきところだった。

もう一回りして、たった一人でビッグテーブルを跳び上がる視界に、シートからカラダを浮かして、真っ赤な肢体が夏の空に伸びる。空に太陽が眩く光る午後、カノジョは遠慮なく、いくつもの放物線を高い青空に描いた。「ビッグ」と呼ぶのがためらわれるテーブルトップを背に加速するRMから、ランディングをすべり降りるカノジョに視線を流す。ゴーグルレンズの奥、瞳に真っ赤なジャージとパンツが、まぶしく映った。