manmi 3

2日掛けて目にする日本海、5月の海は寄せる波も穏やかに広がっていた。

北海道生まれのカノジョは、北の大地が染みついたように大らかで、素直だった。バイクを操るときも、それは変わらなかった。「開けろ!」と言われればスロットルが止まるまで一気に全開、「ブレーキ!」と声を荒げればレバーとペダルが簡単に二つのタイヤをロックさせる。そんな風だった。そして、ようやく教習所を卒業したカノジョは、白地に淡い紫のワンポイントが入ったヤマハのオフロードバイクを選んできた。そのカノジョを隊列の中に押し込んで、はるばる能登までやってきたのだ。初めてのツーリングに、とんでもない長距離を走らせてしまった。それでもカノジョは、いつも笑っていた。

サイドスタンドが砂に埋もれてしまわないように、適当な空き缶をつぶして下に敷いて、マシンを波打ち際に停めてみる。残りの連中も同じような空き缶を見つけては、海を背にマシンを立てていく。そして、思い思いに海とマシンとの構図を決めては、慎重にフィルムカメラのシャッターを切っていく。さっき見たカワサキ乗りが、何度もマシンを動かしては「立ち位置」を調整していた光景に、そんなことを思い出していた。被写体は愛機だけ、今も昔もライダーはナルシストだ。砂を走る白波に引きずられるようにして脳裏に浮かんできた、カノジョの大胆不敵なアクセルワークに、ふと口元がゆるんだ。

<つづく>