はぐれ蛙

杏色に染まりゆく西の空へと、湿り気をまとい風が流れていく。禿げた田圃のあちらこちらから細く煙が立ちのぼり、籾殻を焦がした臭いが漂い辺りに立ちこめる。半端な陽射しは昨日の雨を乾かす間もなく、途中で行ってしまい、代わりに夜気が東から、重たそうにゆっくり忍び寄ってきた。通りを流すヘッドライトだけが浮かび上がるようになるともう、畔の縁もよくわからない。そして濃くなる宵闇に、コオロギの声だけが大きく響き渡る。居場所のなくなった蛙が一匹、藁屑の上に跳んで落ちていった。