長い日曜日 5

<10/7の続き>

午前九時

初めて終点まで走る東北縦貫は、岩手から青森に入るものとばかり思っていた。それが十和田湖の南を西に秋田へ入り、そこから青森に迂回しながら抜けていく。安代で分け入った道は、やがて山を越えて蛇行を繰り返す。ほどなくやってきた鹿角八幡平、その先にある花輪PAは、keiの生まれ故郷だった。

「民家は数えるほどしかない寂しいところ」と話していたはずなのに、高速に交差して走る道には、街並みの眺めが山裾に向かってずっと続いていた。深い山の緑が眩く光り、その際を川が流れて小さな田圃に稲穂が揺れている。ただ、今は、それらをまとめて瞳の奥にしまうだけで通り過ぎなければいけなかった。

せっかくの景色にも、最後の給油のチャンスを逃して気はそぞろ。高速を降りるまで、まだ70kmはある。インパネの中、ガソリンの残りが少ないことを知らせる警告灯が、ずいぶん前から橙色に光ったままになった。

<つづく>